アルバム「朗らかに」

10月30日に「朗らかに」という7曲入りのミニアルバムを出しました!

yunovation.net

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↑素敵なアルバムアートワークは現在多方面で活躍中の落合晴香さん作。

 

○アルバムコンセプト

鍵盤ハーモニカが単なる教育楽器ではなく演奏楽器として使われる時、オーガスタス・パブロをはじめとしてダブで使う人たちが多くいたり、バンド「たま」のような寂しげなサウンドに親和性が高かったりして、哀愁のある仄暗いメロディがよく似合う。一方で私が得意なのはアタックが強く快活な吹き方で、思いつくのも専ら明るくて陽気なメロディばかり、ということに気づいてきた。そこで今回は鍵ハの吹き方、メロディライン、トラックのアレンジ含めて、自分らしい「朗らか」なサウンドにすることを意識しようと思った。

私自身は決して「朗らか」な人間ではなくて、前向きに物事を考えるのも、人前で明るく振る舞うのもあんまり得意ではない。けれどたまに歌詞にしたい言葉やメロディを思いつくと一人でニヤニヤしてテンションが上がるし、DAWの上で曲が形になっていけば、最初の思い通りでなくても「自分こんなのも作れるんだ!」と嬉しくなる。それで、そういう瞬間があるたびにああ、音楽を作るようになってよかったなと思うし、目の前の景色が柔らかくなる感じがする。決して楽しいことばかりではないけど、創作することが「朗らかに」毎日を過ごす力になっていることは確かだし、歌詞のある曲はそういったことについて歌えたらいいな、と思った。

 

○各曲コメント

1. 朗らかに

モノレール彩都線に乗って自宅から万博記念公園に向かう朝がテーマ。

彩都線、ゆるやかな弧を描いてぐるりと公園を周っていくのが好きで、車窓から外を眺めているときにはこの町に来てよかったな~と思う。

歌の部分以外は2年生の時に作ったI’m a sophomore now!をベースにしていて、生音のサンプルなどが加わってさらにカラフルで賑やかな印象になりました。

バンジョーのパートは手で打ち込んだんだけど、かなり頑張って生弾きっぽい感じにしたので聞いてみて!

歌は基本的にメイン+コーラス2本の3部編成(っていうの?)で、コーラスをでかめにして合唱みたくしたのは柔らかく祝祭感のある感じにしたかったのと、歌詞の都合から。

歌詞はいつもだいたいこんなことが言いたい、という文章があって、音数に合わせて言葉を間引きしていかなければいけないんだけど、どの単語も必要不可欠な気がする。悩んだ末コーラスで違う歌詞を歌えば削らなくてすむじゃん!と思い、( )内に示すようにコーラスでメインボーカルと違う歌詞を歌うことに。

空を走る
ゆるやかに 弓形に
はるか遠くから
照らす陽を背に (して)
千里の丘を望む

前触れなく出会うたび
重なるときめきは
見える景色を
揉みほぐし柔らかくして (馴染ませる)

仕方なしに選んできた
そう思ってた (今までの) 全ても
確かに温かい重みをもってこの肩に(この両手に)

頼りなく揺れる今は
根をはり (互いに) 引き寄せあい
紡ぐ音と言葉は
どんな色を目指すことも朗らかに

 

全体的に最後まで勢いを失わずコンパクトな、オープニングにふさわしい曲になったと思います。

 

2.roki store

roki storeとは万博記念公園にあった土産/軽食屋で、レトロでアメリカっぽい外装が好きだったたのにいつの間にか改装され現在はEXPO GOODS STOREなる店に変わってしまった かわいそうに

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 去年の夏にシングルとして出した時とほぼアレンジは変わらず、ミックスで気になっていた部分を改善しました。主に変えたのはベースや鍵盤ハーモニカにかますアンプシュミレーターで、全部liveの内蔵のやつですが、太く締まりのある音になったのではないかと思います!

推進力のあるグルーブを出すためにどのパートをどのくらいずらしたらいいんだろう、というのは毎回悩みどころなんだけど、この曲ではドラム類とベースなどリズム隊はほぼ拍ジャストで刻み、それ以外にはガンガンにスウィングをかけたところめっちゃ良くなった

 

3.constant T

ラッパーが複数人でマイクリレーをしているのに憧れて、うちもそれやりたいな、と思ったのが始まり。

それまで一曲の中でボーカルも鍵盤ハーモニカもやっている曲ってなかったんだけど、今回はどちらもやってみよう、しかもどちらかが副次的になることなく同列に聞こえるようにしよう、という試みをしました。結果、1コーラス目は鍵盤ハーモニカ、2コーラス目は歌でその後は鍵ハとボーカル2本でデュエット、という展開

鍵盤ハーモニカでこういう音色を出すには、こういうADSRにするには、どういう風に息の速さや口の形、タンギングを制御すればよいか、というのが4年目にしてだいぶ掴めてきた。この曲はアタック強め、リリース短めでキツめの音にしたくて、だからタンギングはT寄りで、息を速くするために口内の容積を減らして、ちょっと構えを上げて.....みたいな。

 鍵盤ハーモニカの吹き方について自分なりに気づいてきたことはいっぱいあって、需要はなくともそういう情報がインターネットのどこかに転がっていることは大事なので、また書いていきたい。

ビートに関してはかっこいいヒップホップのを作りたかったんですが(...)、編成はシンプルながらもちろんこれが難しくて、キックを前にずらしたり、後ろにずらしたり、ハイハットにきつめにコンプをかけたり、うわもののアタックを抑えたり、してもなかなか垢抜けずもたつきがとれず。一人前のビートメイカーになるにはまだまだ修行が必要だな、、、という感じです。

 

4.town fair

個人的にこのアルバムの中で一番好きな曲です。メロディラインに関して言えば自分が今まで作った曲の中でも一番かも。テーマは地域の大きめの公園で毎年秋に開かれるお祭り、で演奏されている曲、です...

名前を挙げるのも恐れ多いけど、大敬愛するケルト&ブルースバンド、ハモニカクリームズさんのような曲が作れたらなと思っていた。

メインの旋律を奏でるハーモニカとフィドルが各々アドリブを加えて自由に演奏しながらもところどころでバチッとユニゾンするのが最高にかっこいい。

そんなハモクリさんに倣ってメロディを2本で演奏することに。最初はピアニカ&鍵盤リコーダーのアンデスでやろうと思ってたんだけど、アンデスのピッチの制御がめちゃくちゃ難しく、断念してヤマハp-37EとスズキのPRO-44HP(音がキンキンするのが特徴、高音域担当)の鍵ハ2本になりました

鍵ハ以外はドラムループにギター、ベース、エレピと再現可能そうなシンプル編成なので是非バンドセットでやりたいな。まあバンドセットを組めるかどうかはアルバムの売り上げ次第で……CD買ってネ…!

 

5.ある程度ある (朗らかに ver.)

昨年出したEPではポップなアレンジにしていただきましたが、今回は家にいる感じというか、よりパーソナルな感じにしたいなと思い、ぐっと音数を減らして、生音中心のアレンジにしました。

ボーカルは今回ピッチコレクトなし、ほぼEQコンプのみの自然派仕上げにこだわったので、せっかくだからピアノも生で録ってみるか、と思い数年ぶりに実家のアップライトピアノの上を開け、マイクを突っ込んで録音してみたがピッチが狂い過ぎていて使い物にならず。ピアノは手打ちで生感を頑張って出しました。

自分の曲でも客演でも、歌もので2番が終わった後なんかに鍵ハのソロを安直に入れがちですね。でもおかげでこういう8~16小節のソロ的メロディを考える筋力が鍛えられてきて、セッションするときなどのアドリブも上手くなった気がする。

 

6.難波ナイトアウト御殿

実家が埼玉で、4年前にこちら(大阪)に引っ越してくるまではほとんど関西圏に足を踏み入れたことがなく、大阪に関しては、賑やかで、下世話で、人情に厚くて...とステレオタイプ!なイメージしか持っていなかった。で、そのころ想像していたような、じゃりン子チエのテツが毎晩繰り出すような、ファンタジーとしての「大阪の夜の繁華街」がテーマの曲。

旋律を奏でる2本の鍵ハは歌謡曲的なアーティキュレーションを意識しました、2本で息を合わせて吹くのが吹奏楽やってた頃みたいで楽しかった。どっちも自分なんだけど。使っているのはヤマハのp-37Eのみで、オクターブで吹いています。

 

7.wannasing

実家のおばあちゃんは料理が得意なんだけど、この前実家に帰った際、ふと「草団子が食べたいな」と思ったらしく、すぐに近所でヨモギを摘んできて、あんこ練って草団子を作って食べていた。それを見て行動力がすげーなと思うと同時に、なんかうちが曲作ってんのと同じだなと思った。

私は音楽が好きだから音楽を作ってるけど、料理をするのも、写真撮るのも、文章書くのも、ラジオやるのも等しくクリエイティブで、自分には到底作れない、思いつかないようなものを喜んで作っている人の姿を日々見られるっていうのはいいなあと思います。そういうみんながそれぞれの形で作っているのっていいね、これからも作っていけるといいね、という歌。

あとはセルフタイトル的な曲にしたくて、本名(ゆうきっていうんですけど)やTwitterのIDである"wannasing"を織り込んだ歌詞に。

just sing what you wanna sing, 透明な朝に
戸を開け踏み出す 勇気さえあれば
just do what you wanna do, 絶対にできる
光が差し込む 一瞬を信じ進めれば

祝祭感があってエンディングにふさわしい感じの曲になったんじゃないかなと思います。

Live Sounds Keys Sample from Retro Piano Series | Splice Sounds

ピアノリフはspliceのこちらのサンプルから。 このサンプルとボーカルで掛け合いがしたいな、というところから作り始めた。

 

○リリースしてからのこと

CDで、ストリーミングで、bandcampで朗らかにを聴いてくださったみなさま、ありがとうございます。

中学・高校の友達が聴いてくれたり、CDを買ってくれたりして、久しぶりに連絡をくれたのが嬉しかった。研究室やバイト先の人たちが聴いたよって声をかけてくれたのも嬉しかった。お母さんお父さんはやっぱりmp3でなくCDを持っていた方が聴きやすい。まとまった音源を作って、CDに焼いたことで身の回りの人たちに、きちんと「こういうことをやってるんです」と伝えることができてよかったなと思う。

ただ、レーベルを介して出したわけではなくて、全国流通したわけでもなくて、プロモーションにもほぼお金をかけていないので、今まで知っててくれた方々には届いたけど、今回のリリースで聴いてくれる人が広がったというわけではない感じ。

曲が完成したあとの、作品としてパッケージし売り込む部分にもうちょっと力を入れた方がよかったのかなと思うけど、自分から人に声をかけて協力してもらう、というのが苦手でほとんどできなかった今までと比べたら、落合さん・おしこまん!氏らに依頼して、話し合いを重ねて素敵なアートワーク、特設サイトを作っていただいただけでも今回は十分で、まあようやったんとちゃうの、とも思う。

そこの部分をもう少し頑張るというのは、これから先リリースする際の課題にすればいいかな。部屋にある大量の在庫を捌ききるまで音楽をやめるわけにはいかないので!

 

最後に、発売するにあたってアドバイスをくださり、お手伝いいただいたパーフェクトミュージックの天野さん、アートワークすべてを制作してくださった落合晴香さん、特設サイトを作ってくださったおしこまん!さんにこの場を借りて御礼を申し上げます、ありがとうございました。